: 応用1:古典統計力学
: 計算物理学 No.8(モンテカルロ法 2)
: 計算物理学 No.8(モンテカルロ法 2)
を物理系の状態を記述する1組の変数とする(各粒子の速度と運動量、
イジングモデルでの全スピンの配置など)。数値シミュレーションにより一連の
が生成され、
はある確率分布
に従う。
例えば、一様分布の乱数を使うと統計力学の物理量
のカノニカル平均は
とした時
で与えられる。
しかし、カノニカル平均では、平均エネルギー
近くの状態が主に寄与するので、
一様分布ではあまりにもサンプリングの効率が悪い。
そこで、あらかじめ確率分布を
ととることにすると、
のカノニカル平均は
となり効率的である。
次の問題は、望む確率分布
に従う状態の系列
を生成するルールを見つけることである。
確率分布
に従うシミュレーションの系列
を導くため、
状態
がわかった時に、次の状態
の確率分布を
与えるルールを考察する。 状態
を与えた時に次の状態
に移る遷移確率を
と置く。
この時、
が以下の条件を満たす時にマルコフ過
程(Markov process)と呼ぶ。
- 規格化条件
 |
(1) |
- エルゴード性
 |
(2) |
- Limiting probability
 |
(3) |
[説明]
状態
をベクトル空間とみなした時、遷移確率
をその上の線形変換(行
列)とみなすことが出来る。規格化条件とエルゴード性より、
は(縮退のな
い)最大固有値
を持つ。
Limiting probability の条件より、最大固有値
に対応する固有ベクトルは
であることがわかる。
したがって、
が十分大きい時に
を任意の状態に施すと、
の平衡分布に近付く。
つまり、遷移確率
にしたがって
を生成すると十分長い回数
の後には望んだ確率分布
に近付く。
統計力学などでモンテカルロシミュレーションする場合は、遷移確率
をもっと単純な過程に分解し、
 |
(4) |
とする(例えば状態
は状態
と局所的な違いしか無い)。
この時、マルコフ過程の Limiting probability の条件は
 |
(5) |
という詳細釣合(detailed balance)の条件に置き換えることが出来る。
[問題]
(3)の左辺に
(4)、
(5)
を代入して
(3)の右辺となることを確かめよ。
: 応用1:古典統計力学
: 計算物理学 No.8(モンテカルロ法 2)
: 計算物理学 No.8(モンテカルロ法 2)
Kiyohide Nomura
平成17年6月13日