物理学に関する推薦書リスト

物理学科の学生、大学院生(他分野からの専門家も含む)への推薦書リストを 作りました。私自身の他に、 young-phys(YPML) のメーリングリスト の方々の推薦及びコ メントも加えています。これ以外の推薦又はコメントをしたい方は、YPML ま たは野村( knomura@stat.phys.kyushu-u.ac.jp ) までどうぞ。
(最終更新日
目次

学部向け

自分自身で苦労したのと、教える時に模索したものとが入ってま す。物理学科2、3年次向けの本として 比較的分かり易い上に良くまとまったものとして
  1. 解析力学:
    1. 「量子力学を学ぶための解析力学入門」、 高橋 康 著 、 講談社サイエンティ フィック
      コメント:(野村)解析力学が手短にまとまっている良書。無限小正準変換、 ポアソン括弧、ネーターの定理など、後に量子力学、場の量子論で重要になる ポイントが押えられている。また、付録の場の理論への拡張で、場の量子化も 扱っている(基本的には各モードに分解し、調和振動子として扱う)。
    2. "The Variational Princeples of Mechanics", by C. Lanczos, Dover
      コメント:解析力学の思想と歴史を振り返りたい向きに。日刊工業新聞社から、 「解析力学と変分原理」で翻訳されているが、入手困難かも。
  2. 電磁気学:
    1. 「電磁気学」、 砂川 重信 著、 岩波物理テキストシリーズ 4(旧岩波全書)
      コメント:(野村)コンパクトな中に電磁気学だけでなく、その学習に必要な ベクトル解析(ガウスの定理、ストークスの定理など)も説明されている。さ らに、電磁場のエネルギーと運動量を説明しており(Maxwell 方程式、ポイン ティングベクトル、ローレンツの力から)、場が物理的実体であることが納得 される。
  3. 量子力学:
    1. 「現代の量子力学 上・下」、 J. J. サクライ 著、 吉岡書店
      コメント:(野村)量子力学を学ぶための良書。経路積分の説明、ベリー位相 など、やや先走った部分もあるが、無限小変換と(演算子の)交換関係中心に 記述してあり、波動関数扱わなくても(特殊関数知らなくても!)量子力学マ スターできる。ただし事前に解析力学と線形代数(+電磁気学)の学習が望ま れる。
  4. 統計力学:
    1. 「熱統計力学」、 戸田 盛和 著、 岩波
      (阪大の水野さん(ymizuno@ronp.osaka-u.ac.jp)推薦)
    2. 「統計力学」、 長岡 洋介 著、 岩波 基礎物理シリーズ 7
      コメント:(東工大の等々力さん(todo@hehe.com)推薦)、(野村)量子力学 の調和振動子を元に統計力学の議論を展開。説明は明解であるが、事前に量子 力学の学習がある方が良い。
    3. 「統計物理学 上、下」、 ランダウ・リフシッツ 著、 岩波書店
      コメント:(野村)初学者向けではないが、含蓄のある本。臨界現象、対称性 を含む部分は特にランダウの思想が良く反映されている。
    4. 「大学演習 熱学・統計力学」、 久保 亮五 編、 裳華房
  5. 物理数学
    物理数学は大変広範囲に渡るので、一般的なものと個別分野に分けた。 学部時代に学ぶべきものは一般的な物理数学の分類の中に含めた。 物理数学参照。
  6. 特殊相対論:
    1. 「相対性理論」、 内山 龍雄 著、 岩波物理テキストシリーズ 8(旧岩波全書)
  7. データ解析
  8. 実験
  9. その他:
    1. 「理論物理学教程」、 ランダウ、 リフシッツ 著、 東京図書、 (統計力学)岩波
      コメント: (野村) 初めて読むのには大変であるが、1度勉強した後でさらに物理学全 体を統一したものとして見渡すのに是非読んでおくべきシリーズ。
    2. "Surprises in Theoretical Physics", by R. Peirls, Princeton
      コメント: (野村) 学部3、4年生から大学院生で(物理学で)頭の体操をするのにい い本。セミナーにも使えるかも。「理論物理学秘伝集」(共立出版)で翻訳あ り。続編で、"More Surprises ..." がある。

大学院・専門家向け

  1. 場の量子論
    1. "Field Theory: A Modern Primer", by Pierre Ramond, Benjamin
      コメント:(野村)第1章は、(古典)場の解析力学と対称性、保存則、ネーター の定理と言ったところ、第2章でファインマンの経路積分、第3章で経路積分の方 法を場の量子化に応用、それ以降は摂動、ゲージ場(Yang-Mills 場)の量子化 で、良く書かれている上にさほどフォローするのが難しくない(根気があれば)。
    2. "Quantum Field Theory", by Lewis H. Ryder, (Cambridge Univ. Press)
      コメント: (東工大の押川さん(oshikawa@stat.phys.titech.ac.jp)) この本は、確かにとっつきやすいのですが、真面目に読むと結構いい加減です。 何となく雰囲気をつかむのには良いと思いますが、深く学ぶ時には 奨められません。ただ、私は第2版は見ていないので改良されたかも しれません。
    3. 「ゲージ場の量子論 I,II」、九後 汰一郎 著、 培風館
      (上記2冊は阪大の水野さん、能開大の大野さん(ohno@cs.uitec.ac.jp)推薦)
    4. 「物性研究者のための場の量子論 I,II」、 高橋 康 著、 培風館
      コメント:(東工大の押川さん)丁寧な入門書ですが、 タイトルの 「物性研究者のための」は実態に即してないので取った方が 良いと思います。(私)初歩的なところから、Feynman diagram, Dyson 方程 式、線形応答理論、基底状態の縮退と Goldstone の定理など、良く書いてま す。物性理論家にとっては後経路積分による量子化も知っておけば良いかな。
    5. "Gauge Theory of Elementary Particle Physics", by Ta-Pei Cheng and Ling-Font Li, (Oxford University Press ; ISBN: 0198519613 )
      コメント: (東工大の押川さん)この本はしっかりしていて、物理も豊富なので良いと思います。 ただ、ある程度場の理論に通じていることを前提に書かれているので、 例えば Bjorken-Drell -> Cheng-Li という感じでしょうか。
    6. "Relativistic Quantum Mechanics", by J.D.Bjorken and S.D.Drell, (McGraw-Hill Book Company)
      "Relativistic Quantum Fields", by J.D.Bjorken and S.D.Drell, (McGraw-Hill Book Company)
      コメント: (能開大の大野さん)良い本だと思います。 #古いですか? ##Ryder と一緒に読むというのはいかが? (東工大の押川さん) Bjorken-Drellはしっかりしていますが、ちょっと古いですよね。 まあ最初に読むには非常に良いかもしれません。
    7. "Aspects of Symmetry", by S. Coleman, Cambridge
      コメント:教科書ではないが、面白い。
    8. "Gauge Fields and Strings", by A. M. Polyakov, Harwood Academic Publishers
      コメント:教科書ではないが、面白い。
  2. 統計力学と場の理論
    1. "Statistical Field Theory 1,2" by C. Itzykson and J-M. Drouffe, Cambridge Univ. Press (1989)
      コメント:(野村)2巻に分かれている。第1巻はブラウン運動を通して経路 積分を導入し、2次元イジングモデル、平均場近似、相転移、繰り込み群へと進 む、比較的標準的なものである。 第2巻は、共形場理論、ランダム行列理論、ランダムジオメトリーなど、研究の 最前線に触れる題材を扱っている。第1巻は独特の癖があり、例えば2章のイ ジングモデルの相転移の厳密解などグラスマン代数を導入して大げさとも思え る(結局自分の研究を紹介している)。第4章の Bereziskii-Kosterlitz-Thouless 転移については、この種の教科書では数少 なくまともに扱っている(これは、Jose-Kadanoff-Kirkpatrik-Nelson の論 文に従っている。同時に繰り込み群方程式の導出で首尾一貫していないと ころもひきずっている(と著者たちも弁明している))。第1巻に関しては、2章 を飛ばして読めば、比較的バランスもとれている。 第2巻のトピックスを追う部分には比較的長持ちす る題材を扱っている。また、各章の後にある参考文献紹介は便利である。
    2. "Quantum Field Theory and Critical Phenomena" (3rd ed.) by J. Zinn-Justin, Oxford Univ. Press (1996)
      コメント:(野村)1000 ページ以上もある大作であるが、素粒子理論と 臨界現象の理論を統一的に述べており、比較的読みやすい。なお、日本物理学 会誌 1998 年 3月号、207 ページの梁先生による紹介も参照のこと。
  3. 繰り込み群
    1. "Lectures on Phase Transitions and the Renormalization Group" N.Goldenfeld, Addison-Wesley, (Frontiers in physics 85)
      (阪大の菊池さん(kikuchi@godzilla.phys.sci.osaka-u.ac.jp)推薦)
      コメント:(菊池さん)Goldenfeldは、入門書として非常によくできていると思う。入門レベルの繰り込 み群の解説は記述がいい加減だったりすることがあって、気になる場合が多いの だけど、Goldenfeldはその点、簡単な話ばかりのように見えても、記述がしっか りしているので好き。
    2. "Field Theory, the Renormalization Group, and Critical Phenomena" Amit, 2nd Edition, World Scientific
      コメント:(菊池さん) 本気でField theoreticな計算をするなら、Goldenfeldなんか読んでてもダメなわ けで、そりゃあAmitでしょう。2-loopまで計算しろ、と言われたら、Amitに書い てあるように、t'Hooft流のminimum subtraction以外じゃやる気がおきませんよ ね(私だけ?)。でも、いきなりAmitだと、何やってるかわかんないと思うな。 (野村) 臨界現象の側面に付いては短く紹介して、いきなり場の理論的定式化 に行くので、物性論の人にとっては入りづらいところがある。また、本文の計 算は演習問題を解かないとしっかり追えないようになっているので、その点も 大変である。しかし、定式化はしっかりしており、論理の流れも押えているの で、本格的に解析的に繰り込み群を使おうとする人にとっては、1度は目を通 すべき本である。
  4. 共形場理論
    1. "Fields, Strings and Critical Phenomena", ed. E. Brezin and J. Zinn-Justin, Les Houches XLIX, North-Holland
      コメント: (戸塚) この中でも特に Ginsparg,"Applied conformal field theory" が、必要なとこ ろは押えながら細か過ぎる部分はうまく省略しているので、共形場理論の入門者 にとって良い文献となっている。物理モデルの対象としては自由ボゾン、フェル ミオンを詳しく分析している(これ以外のトピックは他の文献に委ねている)。 また、Further reading のための文献リストもしっかりしている。 (野村) 戸塚さんの意見に賛成。経路積分と複素関数論の知識があれば読める。 敢えて言うならば、(Noether current や) Ward-Takahashi 恒等式のような、 場の理論の対称性と変換則の部分は前提として知っていた方が良い。
    2. 「共形場理論と1次元量子系」, 川上 則雄, 梁 成吉著, 岩波書店
      コメント: (野村) 統計力学、物性基礎論に共形場理論を応用した本。 ベーテ仮設法(1次元量子(スピン、電子)系の厳密解)、朝永・ラッティンジャー 流体、ボゾン化との関連について書いているので、これらの専門分野の人が共形 場理論を学び利用する(その逆も)のに適している。

      但し、ページ数制限のためか、 共形場理論の基本原理から学ぶと言う構成にはなっていない。そちらに関心のあ るものは、別の文献に頼るしかない。また、これは「固体物理」の連載をベース としているが、文献リストが元のものに比べ、貧弱になった印象を受ける(これ もページ数制限のためか)。

    3. "Conformal Invariance and Application to Statistical Mechanics", ed. Itzykson, Saleur, and Zuber, World Scientific
      (野村) コメント:共形場理論の分野の 1988 年までの主要な業績を集めた論文選集。
  5. ボゾン化
    1. "Bosonization" ed. Michael Stone, World Scientific
      コメント: (野村) 論文選集。Introduction でボゾン化の歴史についてと、ボゾン化 を整理した形で簡潔に記述しているので、専門家も一読の価値あり。但し繰り 込み群については別に勉強しないと十分な物理学的解釈できない。
    2. "Bosonization of Interacting Ferminons in Arbitary Dimensions" by Peter Kapietz, Springer
      コメント: (野村) (物理学会から書評を頼まれてます。今読んでいる最中です。以下はあくまで 暫定的コメントです。) ボゾン化を、高次元に拡張しようという試みは A.Luther (Phys. Rev. B, Vol. 19, pp.320, (1979))により始められ、F. D. M. Haldane(Helv. Phys. Acta., Vol. 65, pp.152, (1992) により再発見され、2次元のフェルミ流体 (高温超伝導と密接に関連する)などに盛んに応用されている。この本は高次 元ボゾン化に対する入門書となると同時に、現代流にフェルミ流体論を勉強し 直すのにも勧められる。1次元の朝永・ラッティンジャー流体と、高次元のフェ ルミ流体論が統一的視点から眺められるのは、大変興味深い。 敢えて難をいえば、後方散乱や、Umklapp 過程につい ては議論していない(後者は特に 高温超伝導では重要と思われる)。 しかし、これらには面倒な繰り込み群の計算が必要であり(2、3次元では関 係する過程が多いということ)現在進行中の研究テーマであるので、筆者の選 択も正当化されるであろう。
  6. ベーテ仮設
    1. "Introduction to the Bethe-Ansatz approach in (1+1)-dimensina models" J. H. Lowenstein, in "Recent Advances in Field Theory and Statistical Mechanics", ed. J-B. Zuber and R. Stora, Les Houches XXXIX (1982), North Holland
      コメント: (野村) ベーテ仮設について書かれたものではこれがもっとも分かりやすく、 良くまとまっていた。ベーテ仮設から更に熱力学的極限の結論を出すためには、 Euler-Maclaurin 展開で積分方程式に直し、Wiener-Hopf 法でこれを解くこと が必要であり、この点が各人の腕の見せどころになろう。また、繰り込み群 (最近では共形場)との比較で物理的意味ずけをする部分も参考になる(主に 扱っているのは近藤問題)。
  7. カオス・力学系
    1. "Order within Chaos", by P.Berge, Y. Pomeau and C. Vidal, John Wiley & sons, (1984)
      邦訳:「カオスの中の秩序」、相澤洋二訳、産業図書, (1992)
      コメント:(東京理科大の藤平さん(tohei@rs.kagu.sut.ac.jp)) 散逸系のカオスの入門書。
    2. "Chaos and Integrability in Nonlinear Dynamics", by M. Tabor, John Wiley & sons, (1989)
      コメント:(東京理科大の藤平さん)保存系のカオスに力点を置いた本。
    3. 「物理学最前線30」、大槻義彦編、 共立 (1992) の中の 「カオスの物理」、 斉藤信彦 著
      NTT の石山さん(ishiyama@vipm.tnl.ntt.co.jp)推薦
    4. 山口昌哉編著  数学セミナー増刊 入門現代の数学 1 非線型の現象と解析  (1979)                   2 数値解析と非線型現象 (1981)
      コメント:(石山さん) 数学寄りが欲しいひとへ。 やや古い。
    5. 「カオス入門 --- 現象の理解と数理」、長島・馬場 著、培風館、1992
      コメント:(日立の森さん(mori@harl.hitachi.co.jp)) 散逸系のカオスについての本で、保存系についてはほとんど書いて ません(Berge et alと同じ。一方、斎藤先生の最前線30は保存系 について書いてある(らしい))。 前半簡潔に数学がまとめられていて、最終章「現実的な系でのカオ ス」は、データ解析等に用いようと言うユーザに役に立つと思いま す。「地に足がついた入門書」という感じで気に入っています。 欠点は、参考文献がないことです。
    6. "Chaos in Dynamical Systems", by E.Ott, Cambridge
      コメント:(阪大の菊池さん) これなんかも入門書として評判いいですね。僕は好きです。
    7. J. Gukenheimer and P. Holmes, Nonlinear Oscillators, Dynamical Systems, and Bifurcations of Vector Fields, (springer 1986)
      (京大の早川さん(hisao@yuragi.jinkan.kyoto-u.ac.jp)推薦)
  8. セルラー・オートマトン
    1. "Cellular Automata and Complexity", by S.Wolfram, Addison-Wesley, (1996).
      コメント:(NEC の斯波さん(shiba@ccm.cl.nec.co.jp)) (セルラー・オートマトンの本として)これはいかがでしょうか。Wolframの論 文集で内容は古い(1988年まで)ですが、 物理屋の複雑系初学者にとってとっつきやすいのではと思います。 (佐賀大の只木さん(tadaki@ai.is.saga-u.ac.jp)) Wolframの本は、代数的なことがかなり含まれていています。どち らかと言うと、CAそのもののadvanced な本でしょうか。
    2. "The Global Dynamics of Cellular Automata", by Andrew Wuensche & Mike Lesser, (Addison Wesley, 1992)
      コメント:(佐賀大の只木さん) CAそのものの本としては、 が絵も豊富で、イメージを捕まえやすいと思います。
    3. "Cellular Automata", by Howard Gutowitz, (MIT, 1991)
      コメント:(佐賀大の只木さん) CAの応用では、少し古いですが、この本でしょうか。
  9. 一般相対論・宇宙論
    1. 「場の古典論」、ランダウ、リフシッツ 著、 東京図書
    2. "The large scale structure of space-time", by S. W. Hawking & G. F. R. Ellis, Cambridge.
      コメント:(野村)現代流の微分幾何(多様体、ファイバーバンドル)の言葉で 一般相対論を扱っている。数学が好きな人にとっては、特定の座標でテンソル解 析をするよりは自然に思えるかも知れない。
    3. "Gravitation and Cosmology ---principles and applications of the general theory of relativity", by Steven Weinberg, John Wiley & Sons (1972)
      コメント:(東大の平井さん(HIRAI@tkynx0.phys.s.u-tokyo.ac.jp)) テンソル代数の初歩もちゃんと書かれていたりして、他の本で補うべき部分 が少ないところが特長です。進め方もストレートで「うーなんでやろ??」と 悩む場面はとっても少ないです。 入手は比較的容易です。7年前の値段で 14,700 円でした。
    4. "Black Holes, White Dwarfs, and Neutron Stars", by Stuart L.Shapiro & Saul A. Teukolsky, John Wiley and Sons
      コメント:(東大の平井さん(HIRAI@tkynx0.phys.s.u-tokyo.ac.jp)) 題名の通り、Massive Compact Object 全般に関するスタンダードな 教科書(Neutron Star に限れば他にもある)。Schwarzschild radius の 話から、核物質の状態方程式の話、accretion、超新星爆発などなどもり だくさん。 独習用ならこれこれの章を読むべし、講義で使うならこれこれの章を 使うべし、というリストがあったりして、親切です。
    5. "Gravitaion", by C. W. Misner, K. T. Thorne and J. A. Wheeler, (Freeman, 1970)
      コメント:(佐賀大の只木さん)相対論と重力の本としては、やはりこれが 読みやすい教科書だと思います。確かに古いですけど。1300ペー ジ近い厚さですが、基本的事柄から、高度な内容まで入っています。 初心者用ページと上級者用ページに色分けされているので、自分の レベルに合わせて読めます。英語版なので、学部向けにはなりませ んが。
    6. "Quantum fields in curved space", by N. D. Birrell and P. C. W. Davies, (Cambridge, 1982)
      コメント:(佐賀大の只木さん) 重力場中の場の理論、重力による粒子生成とかHawking 輻射に興味のある方には、この本が 読み易いのでは。一般相対論の基礎と正準量子化の知識を前提と して書かれています。
  10. 高分子
    1. "Scaling Concepts in Polymer Physics", P. G. de Gennes, (Cornell univ. Press, 1979).
      邦訳:「高分子の物理学―スケーリングを中心にして」、 高野 宏, 中西 秀 訳 (吉岡書店 ; ISBN: 4842702117 )
    2. "The Dynamics of Polymer Physics", M. Doi and S. F. Edwards, (Oxford University Press, 1986)
    3. Freed: K.F. Freed, Renormalization Group Theory of Macromolecules (John Wiley, 1987).
      コメント:(京大の早川さん) この本は普通のEdwards model(バネモデル+排除体 積)を使っているので、レプリカでだまされた気がした人がなるほど高分子は Feynman diagramそのものだと了解するにはいい本です。但し
      Y.Oono, Adv.Chem.Phys. 61, 301 (1985)
      の拡張バージョンに過ぎません。
    4. J. des Cloizeaux and G. Jannink, Polymers in Solution, Their Modeling and Structure (Oxford Univ. Press, 1990).
      コメント:(京大の早川さん) 臨界現象の絡みでいうと この本は de GennesやDe Cloizeaux自身によるn->0のレプリカトリックに基づい た議論で展開されています。
      (上記4冊は京大の早川さん(hisao@yuragi.jinkan.kyoto-u.ac.jp)推薦)
  11. 液体論
    1. "Theory of Simple Liquids", by J.-P. Hansen and I.R. McDonald, (Academic 1986)
      (京大の早川さん(hisao@yuragi.jinkan.kyoto-u.ac.jp)推薦)
  12. 原子核・サブアトミック
    1. "Introduction to Nuclear Reactions", by G.R.Satchler, MacMillan
      コメント:(東大の平井さん) 原子核の反応の入門書です。本郷の原子核実験の学生の間では 代々M1ゼミのネタに使っています(でも1/3以上進んだことがない)。 同じ著者による本格的な核反応の教科書もあります。
    2. "Nuclear Structure", by A.Bohr & B.R.Mottelson, W.A.Benjamin
      コメント:(東大の平井さん) 核構造の教科書としては、この本が (ちょっと古いですが)決定版ということになっています。 翻訳も講談社からでていたのですが、原書翻訳ともに絶版で、かなり 困っています。 (阪大の水野さん) これは、私自身が学生(M1でしたが)の時に勉強しました。 今でも私の(原子核の)理解の基礎の一つですね。 Vol.1 だけならば、永久にいい本だとおもいます。 Vol.2 は、おそらくもう古いですね。 (Mottelson のいわゆる Nikko Lecture だけでいいかもね)。
    3. "Subatomic Physics", by H.Frauenfelder & E.M.Henley, Prentice-Hall Inc.
      邦訳:「サブアトミック・フィジックス」、 産業図書
      コメント:(東大の平井さん) これは役に立てるために読むというよりも、内容がとっても 教育的で勉強になる、というほうで、素粒子原子核を志望する3年生 〜M2くらいまでの学生が一度精読されるとよいと思います。 #範囲が広いので、DC以上の方が読んでも得るものがあるでしょう。 翻訳はまだ出てるかな。絶版かも。 (阪大の水野さん) これは、英語の方で、新版が出ているようです。 これも私は、M1ゼミで(指導に)使いましたが、まあ悪くはないですね。 でも、これもちょっと古いですが、(例えば、弱い相互作用とかね)、 古いことを書いてある本が、逆に、すくないのが現状なので、 そういう意味で、むかしはどうだったか、知る上でいいと思います。 #今の本は、素粒子の標準理論しか、勉強できない、という意味で、 #逆に、不十分ですから。
    4. 「原子核物理学」、 八木浩輔、 朝倉書店
    5. 「原子核物理学」、 杉本健三、村岡光男、 共立出版
      コメント:(東大の平井さん) 日本人が書いた原子核の教科書もいくつかあるのですが、スタンダード と言えるようなものはあまりありません。しいて言えば、 上記2冊でしょうか。私は前者だけ持っています。 近頃岩波から2冊ほど出ましたが、内容が網羅的でなく、一部の人に しか役立たないと思うので、教科書としてはお薦めしません。 (阪大の水野さん) 岩波の現代の物理学「原子核の理論」でしたら(これも、ある年度に 指導用にゼミに)使ったことがありますが、これの第1部と第3部は そこそこ、標準的なかという気もしません? でも、おっしゃる通りですね。あの部分はいいけれど網羅的ではないです。
  13. データ解析
    1. 「データ解析」,粟屋 著,学会出版センター
    2. 「科学計測のための波形データ処理」,南 著,CQ出版社
    3. 「科学計測のための画像データ処理」,南,河田 著,CQ出版社
      コメント:(NEC の斯波さん)サンプリング定理やノイズ除去など基本的な事について 平易に書かれているので。 特に3は信号回復論と逆問題の章があり、この分野への良い とっかかりになるのではと思います。 信号回復論と逆問題は別に画像処理に限った問題ではないですし。
    4. 「ノイズ入門」,コナー 著,森北出版社
      (1-4 はNEC の斯波さん(shiba@ccm.cl.nec.co.jp)推薦)
    5. 「最小二乗法による実験データ解析」, 中川, 小柳 著, 東京大学出版会
      (東大の平井さん(HIRAI@tkyvax0.phys.s.u-tokyo.ac.jp)推薦)
  14. 実験
    1. 「物理工学実験シリーズ」, 東京大学出版会
      コメント:(東大の平井さん) データ解析以外の実験に関する基礎的な教科書としては、東大出版会の オレンジ色のシリーズがとっつきやすくていいです。 (野村) X線、レーザー、電子顕微鏡、低温、真空、 エレクトロニクス....等について、基本的なことを書いたシリーズ。A5 版で 1冊 150 ページ程度。
    2. "Techniques for Nuclear and Particle Physics Experiments", by William R. Leo (Second Edition), Springer-Verlag
      コメント:(東大の平井さん) (粒子線計測の) 標準的な教科書。未邦訳ですが、丸善や紀伊國屋の洋書コーナー で平置きになっているのも見かけます。 扱っている話題も広く、また1、2年前に第2版が出ているため、 内容も新しくなっていると思います。 たぶん 15,000 円前後。
    3. "Detektoren Fur Teilchenstrahlung", by Konrad Kleinknecht, B.G.Teubner
      邦訳「粒子線検出器」, 高橋嘉右、吉城肇 訳, 培風館
      コメント:(東大の平井さん) (粒子線計測の) ちょっと古い(1964年)ですが、入門書としてはお勧めです。 ただし翻訳の日本語はメタメタ(^^;;)。
    4. "Radiation Detection and Measurement", by Glenn F. Knoll, John Wiley & Sons
      邦訳「放射線計測ハンドブック」(第2版), 木村逸郎、阪井英次 訳, 日刊工 業新聞社
      コメント:(東大の平井さん) (粒子線計測の) 分厚いです。辞書代わりです。学部生に薦める本ではないです。 研究室で1冊あればいいです。
    5. 「粒子物理計測学入門」、福井 崇時 著、 共立物理学講座25、共立出版
      コメント: コメント:(東大の平井さん) (粒子線計測の) 2、3年前に出ました。Kleinknecht が見つからなかったら いいかもね、という本。
  15. 物理数学
    1. 一般
      1. 「物理のための数学」、 和達 三樹 著、 岩波書店
        コメント:(野村)初学者向きに最善というわけでないが、結構良くまとまっ ている。物理 数学としては後複素関数論と特殊関数と群論があればいいかな。1、2年次向 けとしてはいいけど、それ以降も使おうとすると物足りない。
      2. 「数理物理学の方法」、 クーラン、ヒルベルト、 東京図書
        コメント:(野村)物理数学の古典(第2版 1931 年)。原著2巻、日本語訳 では4巻。量子力学の発達とともに名声を高め、物理数学のバイブルといわれ る。
      3. 「高等数学教程」、 スミルノフ、 共立出版
        コメント:(野村)物理数学の古典(第3版 1956 年)。原著6巻、 日本語訳12冊。応用例を含み、平易な記述であるので程度の割に読み易い。
      4. "Mathematical Methods for Physicists", by George Arfken, Academic Press Inc. (1970)
        邦訳:「基礎物理数学 1-3」、 ジョージ・アルフケン、 講談社 (1978)
        コメント:(野村)原著第2版 1970 年。そこそこ新しく、入手性にも難はな い。第1巻「ベクトル・テンソルと行列」、第2巻「関数論」、第3巻「特殊 関数と積分方程式」。クーラン・ヒルベルトの現代版と思えばいいのかな( デルタ関数無しでグリーン関数の導入はすっきりしない)。
        (NTT の石山さん (ishiyama@vipm.tnl.ntt.co.jp)) Arfkenは確か学部の授業の教科書として指定されていたのですが、 読んだ当時は「わけわからん」でしたが、後で振り返ってみると 「なるほど」と思えるという点で実用性はいえるかと思います。 (追記、1985 年に出た第3版について) 手元の英語版は3版です。2版との違いは, 「ほとんど全てのセクションに手を入れた;多くのセクションは全面改訂され,  次を追加した: non-Cartesian tensors, dispersion theory,  first-order differential equations,  numerical application of Chebyshev polynominals,  the Fast Fourier Transform, and on transfer functions.  全面改訂の主眼は,数値計算・数値解析の重点化。  おまけとして,a number of topics including Hermitian operators,  Hilbert space, and the concept of completeness have been expanded.」 だ,そうです。 まあ,1970年の出版で数値計算関係のテーマをとりあげるのは, 当時の計算機の能力などを考えると無理だったのではないかと 想像します。1985年の出版であれば計算機が十分に発達してますので, そこに重点を置く方向に変わってくるのは自然だと思います。
      5. "Method of Theoretical Physics I,II", by P. M. Morse and H. Feshbach, MacGraw-Hill. (1953)
    2. 連続群
      1. 「連続群論入門」、山内 恭彦、杉浦 光雄 著、培風館 (1960)
        コメント:(野村)連続群について、コンパクトかつ過度に数学的にならない ように書かれている。物理の応用例としては、回転群とローレンツ群が挙げら れている。でも、書き方がやや古めかしい。
      2. "Theory of Lie groups", by C. Chevalley, Princeton University Press (1946).
      3. 「連続群論 上・下」、ポントリャーギン、岩波書店
      4. 「連続群とその表現」、島 和久 著、 岩波書店 (1981)
        コメント:(野村)クォーク以降ユニタリー群の表現論が素粒子の対称性の記 述に用いれられるようになった。連続群の表現論は、ウェイトとルートを用 いると議論の見通しが良くなる。これについて簡潔にまとめた本。物理の対象 としては、クォークの SU(3) 対称性と水素原子の O(4) 対称性。
      5. 「リー代数と素粒子論」、竹内 外史 著、裳華房 (1983)
        コメント:(野村)大統一理論に用いれられるリー代数の数学的理論への入門。
      6. 「古典型単純リー群」、横田 一郎 著、現代数学社 (1990)
        コメント:(野村)
    3. 多様体・微分幾何
      1. 「多様体入門」、松島 与三 著、裳華房 (1965)
        コメント:(野村)
      2. 「多様体」、村上 信吾 著、 共立出版社 (共立数学講座19) (1969)
        コメント:(野村)
      3. 「現代微分幾何入門」、野水 克己 著、裳華房 (1981)
        コメント:(野村)一般相対性理論、ゲージ場の理論に用いれられる(数学者、 理論物理学者の高度な常識としての)微分幾何への入門書。多様体、リー群に関 するある程度の予備知識を仮定。
    4. 微分形式
      1. "Differential Forms With Applications to the Physical Sciences", by Harley Flanders, Published by Dover Pubns (origainally published by Academic Press (1963)).
        邦訳:「微分形式の理論」、フランダース著、岩堀訳、岩波書店
        コメント:(石川さん(Chiaki.Ishikawa@personal-media.co.jp)) 普通の物理の学生がどこで微分形式の話を学ぶのかいまだによくわかっていな いのですが、この本は入門というか手軽に読めると思います。あまり凝った話 はでていません、原題からわかるように物理学者などに向けてのア プリケーションを頭においた入門といっていいと思います。(なにしろ元はか なり古い講義を元にしているのでものたりない面もあるかも。) 最後には積分可能となるような線形連立微分方程式のlie 群だったかの 満たすべき係数の関係だったかなにかがかかれていたのが 一番advanced といえばadvanced な内容だったような気もしますが、 詳細は思い出せません。 応用として、はじめの方の例題には laplacianの計算で、微分形式で Laplacian を定式化した上で、いろいろな座標系での座標の値をもとにした表 現で求めるのを簡単に導く例題とかが入っていて、なるほどこういう計算方法 もあるのだというのがわかるようになっています。
      2. "Lecons sur les Invariant Integraux" by E. Cartan (Paris 1922).
        邦訳:「外微分形式の理論ー積分不変式ー」、矢野 健太郎 訳、白水社 (1964),生産技術センター (1977) 復刻。
      3. 「微分形式による解析力学」 木村 利栄、菅野 礼司 著、吉岡書店。
        コメント:(野村)元は日本のマクグローヒル出版からでていたが、その閉鎖 にともない吉岡書店から再版された。
  16. 数値解析
    1. "Numerical Recipes in C" by H. W. Press, S. A. Teukolsky, W. T. Vetterling, and B. P. Flannery, Cambrige University Press (1988)
      邦訳:「C言語による数値計算のレシピ」、技術評論社
    2. 「マトリクスの数値計算」、戸川 隼人 著、オーム社 (1971)
    3. 「行列の固有値」、F. Chatelin(シャトラン)著、伊理訳、シュプリンガー・ フェアラーク東京 (1993)
        コメント: (神戸大の西野さん(nishino@phys560.phys.kobe-u.ac.jp)) とても良い本で、お勧めなんですが、収束性について厳格な分、 初学者には敷居が高い。

野村 清英 のホームページへ
低次元量子系理論研究グループ