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コヒーレント状態

調和振動子のコヒーレント状態は、消滅演算子 $\hat{a}$ の固有状態として

\begin{displaymath}
\hat{a} \vert \lambda \rangle \equiv \lambda \vert \lambda \rangle
\end{displaymath} (5)

定義される( $\lambda$ は複素数)。以下では $
\langle \lambda \vert \lambda \rangle =1
$ と規格化する。

1. パラメーター $\lambda$ $\lambda=\vert\lambda\vert \exp(i\phi)$ と振幅と位相に 分けることが出来る。この時、ハイゼンベルク表示で

\begin{displaymath}
\langle \lambda \vert \hat{a}(t) \vert \lambda \rangle, \; ...
...angle \lambda \vert \hat{a}^{\dagger}(t) \vert \lambda \rangle
\end{displaymath} (6)

を求め、これを利用して
\begin{displaymath}
\langle \lambda \vert \hat{x}(t) \vert \lambda \rangle, \;
\langle \lambda \vert \hat{p}(t) \vert \lambda \rangle
\end{displaymath} (7)

を求めよ。

2. この状態に対して最小不確定性関係

\begin{displaymath}
\langle \lambda \vert(\Delta \hat{x})^2 \vert \lambda \rang...
...\Delta \hat{p})^2 \vert \lambda \rangle
= \frac{1}{4}\hbar^2
\end{displaymath} (8)

を証明せよ。

3(粒子数の揺らぎについて) $ \hat{n} \equiv \hat{a}^{\dagger} \hat{a} $ に対し、

\begin{displaymath}
\langle \lambda \vert \hat{n} \vert \lambda \rangle = \vert...
... \lambda \rangle = \vert\lambda \vert^4 + \vert\lambda \vert^2
\end{displaymath} (9)

となることを確かめよ。従って、 $
\Delta n = \vert\lambda\vert
$ で、平均個数 $N_0(=\langle \lambda \vert \hat{n} \vert \lambda \rangle)$ に 対し、 粒子数の揺らぎが $N_0^{1/2}$ である。

4.(これは問題ではない、解説である)

以上のようにコヒーレント状態の振幅とその揺らぎ は平均粒子数と関連づけられた。では位相はどうか? ディラックは、古典論での調和振動子の位相に関する運動方程式

\begin{displaymath}
\frac{d \phi}{d t}= [\phi,H]_{PB} = -\omega
\end{displaymath} (10)

と、量子論での調和振動子のハミルトニアン $
\hat{H} = \hbar \omega (\hat{n}+ 1/2)
$ から、
\begin{displaymath}[\hat{\phi},\hat{n}]= -i
\end{displaymath} (11)

という交換関係が成り立つと類推した。 これから不確定性関係
\begin{displaymath}
\Delta n \Delta \phi \ge 1/2
\end{displaymath} (12)

がでる。前の問題の結果から、コヒーレント状態では位相の揺らぎ $\Delta \phi$$N_0^{-1/2}$ で、$N_0$ が十分大きい時には無視できる。

これがレーザーや超伝導状態の起源である。


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Kiyohide Nomura 平成13年7月12日