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原子時計と超微細構造

主な原子時計は、水素原子や、セシウム、ルビジウムなど アルカリ金属原子の基底準位の超微細構造準位間のマイクロ波遷移を利用したも のです。 アルカリ金属原子では、閉殻の外に1個の電子をもつ原子ですので、 原子のエネルギーはこの最外殻電子の状態により決まり、 理論的扱いが水素原子と同様、容易になります。

アルカリ金属原子の全エネルギーは電子の軌道角運動量とスピン(電子、陽子、中性子 などの素粒子の固有角運動量)で決まります。 原子核の核スピンと電子スピン(1/2)の相互作用により、 基底準位に分裂が生じます。これを超微細構造と呼びます。

電子の軌道角運動量 $L$ 、電子のスピンは $S=1/2$ ですので、 これらを合成した電子の全角運動量 $J$ $J=L+1/2, L-1/2$ といった 値をとります。 アルカリ金属原子の 基底状態では最外殻電子の軌道角運動量 $L$ は0です。 軌道角運動量が0以外では、電子のスピンとの相互作用でエネルギー準位が 分裂(LS 結合)しますが、これを微細構造と呼びます。 さらに電子スピンと核スピンとの相互作用でより小さなエネルギー準位の 分裂が見られ、これを超微細構造と呼びます。

原子核の核スピン $I$ は 原子核の質量数が偶数、原子番号が偶数の時 $I=0$ 、 質量数が奇数の場合は核スピンは $I=1/2,3/2,5/2,\ldots$、 質量数が偶数、原子番号が奇数の場合は $I=1,2,3,\ldots$ といった値をとります。

原子核のスピン $I$ と電子のスピン $S=1/2$ の合成スピン $F$$F=I+1/2$$ F=I-/2$ の2つの値をとります。 この2つの状態の間にはエネルギー準位の 分裂が見られ、これを超微細構造と呼びます。

超微細構造のスペクトル線は以下のような特徴をもちます。

  1. 周波数がマイクロ波領域にあるので、直接計数が可能です。
  2. 超微細構造の励起状態の寿命は極めて長く( $10^{18}{\rm [sec]} $ 程度 1) 、スペクトル線の自然幅は無視できます。
  3. エネルギー準位間の分布差は、熱平衡状態では極めて小さいので、 その観測には準位間に分布差を与える下準備が必要です。



Kiyohide NOMURA 平成21年6月10日