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: 原子時計と超微細構造 : GPS と物理 : 高精度の時刻同期の必要性

原子時計(量子力学)

GPS 衛星には周波数安定度 $10^{-12} \sim 10^{-13}$ 程度の高精度な原子時計が搭載されています。

ある2つのエネルギー準位$E_{1},E_{2}$を考えると、その吸収、放出のスペクト ル線の周波数 $\nu$ は次の式で与えられます [3] 。

\begin{displaymath}
\nu = (E_{2}-E_{1})/h
\end{displaymath} (9)

ここで、$h$ はプランク(Planck)定数です。

測定周波数の精度はハイゼンベルク (Heisenberg) の不確定性関係により測定時 間により決まります。測定時間を $\Delta t$ 、エネルギーの不確定性を $\Delta E$ とすると、ハイゼンベルクの不確定性関係 [3] から

\begin{displaymath}
\Delta t \cdot \Delta E \ge \hbar
\end{displaymath} (10)

となります。 式 (9) から $\Delta E = h \Delta \nu$ であることを考慮する と、周波数の不確定性は
\begin{displaymath}
\Delta \nu = (2\pi \Delta t)^{-1}
\end{displaymath} (11)

であたえられます。したがって、観測時間を伸ばすほど周波数精度の向上が出来 ます。 $\Delta t$ は励起状態の寿命、相互作用時間などにより決まります。

ハイゼンベルクの不確定性関係は1個の原子の共鳴周波数を計測する場合の精度の限界でした が、多数の原子(数百万個)による共鳴周波数を計ることでさらに高い精度 が実現できます。

原子時計では、原子固有の性質を使っているので、誤差が大変小さいのです。





Kiyohide NOMURA 平成21年6月10日