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この型の原子時計はガスセルに閉じ込めたルビジウム原子の光ポンピングとマイ クロ波遷移の2重共鳴によるものです[4]。 (5S 準位と 5P 準位からなる) 3準位系の光ポンピングにより 基底状態の2つの超微細構造の間に分布差を作り、 上の準位の原子がマイクロ波により誘導放出することを利用して 超微細構造の遷移周波数を測定します。
具体的には、当初 原子は 5S の の準位にほぼ均等に分布していますが、 これに と 5P のエネルギー準位差に対応する光スペクトルを当てるこ とで、 から へと励起します。次に から自然放出して 準位に落ちます。 準位に落ちた原子はさらに光による励起を受け ますが、 準位にある原子は励起されません。このような過程を繰り返すこ とで、 準位に多くの原子が集まり、大きな分布差を生じます (図 3 参照)。 この状態のガスセルにマイクロ波を当てると と の遷移周波数と一 致したところで誘導放出が起きます。 ここで光スペクトルの透過強度を測定すると、マイクロ波周波数が と の遷移周波数と一致したところで吸収が最大となります [4]。
なお、ガスセル中でルビジウム原子が拡散して壁でトラップされるまでの時間を 長くするため、緩衝気体( など)を封入します。 ルビジウムガスセル型の原子時計の観測精度は原子の緩和時間で決まります。
ルビジウムガスセル型の原子時計はガスセルに Rb とともに封入する緩衝気体に よる共鳴周波数のシフトが大きく、1次標準器には適していません。 しかし小型軽量にできるので、実用標準器として広く使用されています。