: 展望
: 具体例
: スピン系(S=1)
1次元電子系の低エネルギー励起は朝永-Luttinger 液体で記述され,電
荷密度の自由度(U(1))とスピン密度の自由度(SU(2))が分離し,各相関
関数は冪乗的に振舞う.
朝永-Luttinger 液体が不安定となる機構には,ウムクラッ
プ過程によるモット転移(フェルミ波数が逆格子ベクトルと有理数の時),スピン
ギャップ相転移(後方散乱項が斥力から引力に転じることによる)が
あるが,これらは BKT 転移の1種でもある.但し,電子系の問題ではフェ
ルミオンの反交換関係を考慮して,境界条件を(フィリング,磁化に応じ)適切に
とる必要がある.
1次元の t-J 模型でスピンギャップが生じると超伝導相関が大幅に増大する
[27] ので注目されていたが,レベルスペクトロスコピーを用
いた解析 [28]
では,従来議論されていたよりずっとスピンギャップ相が広い(低密度側だけで
なく,ハーフフィリング近傍まで存在)していることが分かった(図
8).ユニバーサリティークラスは,SU(2) k=1 WZW モデル
と等価で,実は BCS 転移と通じる.
図 8:
TL: 朝永-Luttinger 液体相,
SG: スピン・ギャップ相,
PS: 相分離状態
([28]
Fig.1 より転載).
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拡張ハバードモデルで,ハーフフィリングでは,絶縁体側で
SDW,CDW 相がでると議論されていたが,レベルスペクトロスコピーを用いた
解析 [29,30]では SDW,CDW の間に別の相が出ると指摘された(通常
の拡張ハバードモデルに異方性等の相互作用を入れると明確に中間相が見える).
Kiyohide Nomura
平成16年6月8日