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: 通常の BKT 転移 : BKT 転移とレベルスペクトロスコピー : BKT 転移と2次転移

レベルスペクトロスコピー

本節では BKT 転移の困難を解決したレベルスペクトロスコピー を紹介する. BKT転移のスケーリング次元の構造を調べると BKT転移線で irrelevantから relevant へ,又はその逆になるものがあるので, スケーリング次元の交差から転移点を決定し,対数補正を除 去できる[12]. 1次元量子系の場合,長さ $L$ の有限系で周期境界条件(PBC)の下で,励起エネルギー $\Delta E_j$とスケーリング次元$x_j$との関係は[6]
\begin{displaymath}
\fbox{$\displaystyle
\Delta E_j = \frac{2 \pi v x_j}{L}
$}
\end{displaymath} (6)

($v$ は電子系のフェルミ速度,または量子スピン系のスピン波速度)なので, 励起スペクトルからスケーリング次元を調べることができる.

さらに各励起は量子数(例えば磁化・電子密度等の量子数$m$(U(1) 対称性), パリティ $P$(空間反転),波数 $q$)で分類できる.

ところで,BKT 転移には離散的対称性の破れを伴う場合 もあり,同じ繰り込み群方程式で記述されるが,臨界指数 は異なる.

レベルスペクトロスコピーを使う際の手順を以下に示す.

  1. 離散的対称性の破れの有無による分類
    1. 離散的対称性の破れのない場合 [12,13]

      3.1,3.3 節の説明と表 1 から量子数 と励起の対応をとり,準位交差から BKT・ガウシアン 転移線決定

    2. $Z_2$ 離散的対称性の破れを伴う場合 [14]

      3.2 節の説明と表 2 から量子数と励起の 対応をとり,準位交差から BKT・ガウシアン転移線 決定

    3. $Z_p$($p>2$ の整数)対称性の破れを伴う場合

      本解説では取り上げていないが,文献 [12] で考察. クロックモデル,多重ウムクラップ過程などに関連

  2. ユニバーサリティークラスの確認(対数補正の除去)
    1. スケーリング次元

      1,2 から 対数補正が打ち消し合う組合せをとり,スケーリング次元が予想 と合うか確認(3.4 節)

    2. セントラルチャージ $c=1$ の確認(3.5 節)

レベルスペクトロスコピーは対数補正を打ち消す組合せをとっているので,小さ な系の数値計算でも無限系に非常に近い結果になる (実際には$O(1/L^2)$ の補正が残るが,十分収束早い).





Kiyohide Nomura 平成16年6月8日